先生もイケメンやでここは!

















今日は四天宝寺中学校へ下見の日です。
なんで下見かって言うと、今が秋休み中やから。その間に手続きとか全部終わらせてしまおうと思って、書類の入ったカバンを持って向かってます。 四天宝寺中学校は、家から徒歩30分のところにあって、金ちゃんの通う道頓堀第一小学校から10分くらいのところにあります。

「着いたあ」

四天宝寺中学校と書かれた門をくぐり抜けると、生い茂った木々がわたしを迎えてくれた。しかし、前の学校の制服を着て、別の学校に来るって言うのはなんか緊張するなあ。
持っていたタオルで汗を拭う。ちょっと肌寒くなったといっても、動いたりするとやっぱり汗ばむ。わたしは来客用の下駄箱でスリッパに履き替えてから職員室に足を運んだ。

「すみませんー」

声を掛けると、中から少しスーツを着崩した先生が出てきた。
わたしの格好を一目見て、状況を理解したらしい。

「ああ、渡邊先生のとこの子か。渡邊先生な、今部活見に行ってはんねん。さっき行ったとこやから呼びに行こか」
「あ、はい」

後ろを付いて行って、靴を履き替えてまた外に出る。
少し歩くと、テニスコートが見えてきて、パァン、と球を打つ音も聞こえた。
カシャン、とテニスコートを遮るフェンスが開いた。ジャージ姿の男の子が出てきて、先生の姿を見て会釈した。いややわ!めっちゃかっこええ子やん!イケメンってやつやで!

「白石、悪いけど渡邊先生呼んできてもらってええか?」
「オサムちゃんですか?わかりました」

そのままフェンスに入って行こうとしたときにこっちに気づいたんか、目線が合った。
ふわ、と漫画みたいな、王子様みたいな顔で笑ってから、コートの脇のベンチでだらんと座ってる帽子の男の人に声を掛けてた。二、三言話してから男の子はこちらを指さす。と、あわてて帽子の人は小走りでこちらへ向かってきた。

「いやー、悪い、山田先生」
「ええって、ほな、俺はこれでな。じゃあさん、また休み明けに」
「はい、ありがとうございました」

頭を下げてお礼を言うと、先生は片手を上げていいよと笑って校内へ戻った。

「書類持ってきたか?」
「あ、はい、これで全部そろったと思うんですけど」

鞄の中から、大きめの茶封筒を渡す。茶封筒の中身を確認した先生は「ん、いいよ」と言ってその茶封筒の中身を押しこんできっちりと封をした。

「これからよろしくなあ」
「こちらこそお願いします」
「せや、俺、ここの顧問やねんけどな、ここにもと同じクラスのやつ二人おんねんで」

コートを振りかえって、渡邊先生はアイツとアイツ、と指さす。
さっき渡邊先生を呼んできてくれたあの、かっこええ男の子と、もう一人はバンダナをした男の子やった。ラッキーやでほんま!

「ちょお、オサムちゃーん、誰やその子!」

ガシャン!とフェンスを揺らしてさっきまでテニスしてたであろう男の子が汗だくでこっちに話しかけて来た。

「おお、忍足おわったんか。こいつはって言って、編入生や」
「編入生!?」

そう聞いた瞬間にそのオシタリくんって子がタオルを引っ掴んでからフェンスから飛び出してくる(その速さときたら)(しかしこの人もイケメン!)。

「アンタがうわさの編入生か!よろしゅうな、さん!俺、2−5の忍足謙也って言うねん!浪速のスピードスターや!」
「(浪速のスピードスター?)よ、よろしく!」

手を掴まれてブンブンと握手される。ちょっと痛いで!かっこええから許すけど!

「おいおい謙也、何絡んでんの」
「お!白石やん!この子編入生やって!」

編入生、と聞いてテニス部の男の子たちがわいわいと集まってこっちへ向かってくる。なんやこれ…!転校してくるってだけで反応しすぎやろ…!
わらわらと集まったのは総勢7人。しかもイケメン揃いときた。
ここのテニス部はおかしいで。かっこよすぎやって。イケメン率ハンパないわ。

「あらあ、編入生なん?私は金色小春って言うねん。よろしくしてねえ」

ウフッと笑って言ったのは眼鏡をかけた男の子で、いや男の子って言っていいんかなこれ。なんか動作が乙女なんやけど。これあれか。オトメンってやつか!後ろでなんか「浮気か!」て聞こえた気するけどなんやねんな。

「俺は白石。こっちのバンダナが一氏。さんとおんなじクラスやで、よろしくな」

キラキラの笑顔が眩しいでホンマ。ひとうじくんの方はなんだかぶすっとしてて、目も合わせてくれない。なんでやねん。

「もう!ユウくんってば!この子と同じクラスになんねんやろ? ちゃんと挨拶くらいしときなさいよ!」

オトメンは変な子だけどいい子らしい!一氏くんは渋々「よろしく」って言ってくれた。
他の人も名前を聞くと次々と教えてくれたけど、正直全部覚えられる自信ない!まあそこは徐々に覚えて行けばええか。

「はい、そこまで。お前ら練習戻り」
「えー!まだ喋りたかったのに!」
「そんなん学校始まってからでも話せるやろ。はいはいこれでお開きや」

ぶーぶーと文句垂れながら、みんな「またな」って言ってコートに戻っていく。 渡邊先生はわたしと向き合って、「気をつけて帰りや」って言ってくれた。

「帰ったら水分摂るねんで。まだ暑いからな」
「はーい」
「ええ返事や。ほなな」



帰り道もまったり歩いて家を目指す。ええ先生や。それに、テニス部の子らもええひと大そうや。
これからの学校生活考えたら、楽しそうやわ。大丈夫、この学校でも頑張れそうやな!
考えれば考えるほど、にやにやしてしまってどうしようもないわ。
考え事してたらすぐに家に着いてしまった。お隣さんは、もう晩御飯仕込んでるみたいでめっちゃええ匂いがする。んー今日はどて焼きと串カツするってゆってたなあ。考えたらおなか減ってきたで!
ご飯の前に部屋ちょっと片付けよっと!











1年365日!





「おねーちゃん!わいとあそぼ!」