かさついた肌に下地を塗り込んで、パフでファンデーションを重ねる。次にアイシャドウを重ねて重ねて、根元に埋め込むようにアイラインで弧を描き、眉にはアイブローを。くるんと上を向いたまつ毛にマスカラをコーディネイト。頬にはまあるくチークを落として、パウダーで整える。仕上げにグロスで薄く色付ければ、わたしの出来上がり。

「今日も可愛いで」
「ん、ちょっと蔵ノ介、キスしないで。グロス取れるんだけど」

わたしの後ろで用意をしていた蔵ノ介が、顎を掴んでわたしを蔵ノ介の方へ無理やり向かせる。ついでにちゅ、とキスする。
嫌々手を振りほどくけど、それが気に入らないのか、またキスしてきた。今度はグロスを伸ばすように。逃げないようにしっかりと頭を押さええつけられてる私は抵抗できないまま蔵ノ介の唇を受け入れるハメになった。赤いグロスが、唇をはみ出して顎や頬にぺとぺととくっつく。「うわあ!」情けない声が出たところで蔵ノ介のくぐもった笑い声が聞こえた。くそう!こいつ楽しんでる!

「もう、やめて!せっかく化粧したのに!」
が可愛いからついな」

ぶわっと一気に体温上昇。きっとわたしの顔は真っ赤だ。褒められることには慣れていないのだ。いつもは軽口を言いあう仲なのに、こうなるとなにも言えない。「ホンマかわいい」うるさいこいつ!
また唇をふさがれると今度は唇を割って舌まで絡めてきた。口の中にグロスの味と蔵ノ介の唾液が広がって酷いことになってる。自分の唾液も混ざるもんだから、角度を変えるたびにぴちゃ、と耳の奥に水音が広がった。

唇を離す頃にはわたしも蔵ノ介も息が上がっていて、わたしたちの唇を繋ぐように銀糸が繋がっていた。だけど、離れると、それは途中でぷっつりと途切れて、私の顎を伝って胸元に落ちた。あ、蔵ノ介の顎にも垂れてる。とってもエロティック。
胸の奥が熱くなって思わず蔵ノ介の顎をべろりと舐めた。わたしはあまりこういうことをしないので蔵ノ介が驚いた顔でこっちを見る。

「なに」
「お前めっちゃエロイ」
「わ!」

腕を引っ張られて押し倒される。ただ、頭は打たないように蔵ノ介の手で守られていた。蔵ノ介は首元にちゅ、ちゅ、とスタンプを押し付けていて、目をうっとりさせていた。

「ちょっと、映画行かないの?」
「そんなんまた行けるやろ」
「え、ちょ、ン…!」

服の上から胸を揉みしだく蔵ノ介はもうけもののようで、がっつくようにわたしの服を剥く。足を少しずらすと、テーブルの脚に当たったようで、カーペットの上に鏡ががちゃんと落ちた。鏡がこちらを向いていて、鏡の中のわたしと目が合って、恥ずかしくなって目を逸らした。









鏡の向こうはあたしの国





「ちょっと蔵ノ介!やるんだったらせめてベッドで…!」