「さぁ、物語を歌おうか」









まる まる まる

ふわふわと浮かんでいるのはなあに?
真っ白な空間の中では一人で立っていた。ここは何処なんだろう。地に、足は しっかり付いている。裸足。ペタペタと足を鳴らして歩く。いくら歩いても、向 こう側―果てが見えない。歩く間も、ぷかぷかとまあるい球はの周りを漂って いる。球は一つではない。ひとつ、ふたつ、みっつ。 とても数え切れそうにはなかった。そうっと近くにある球に触れようとしても球 がを避けていくので触れない。なんだこれは。

また、足を踏み出し歩く。今度は少し遠くまで。
それでも、終わりは見えそうになかった。――じれったいなあ、はそう思って 、また近くにあった球に触れようとした。やはり、避けられたが。むっとして色 んな球に触れようとした。逃げる、逃げる、逃げる。 どれも掴めそうになかった。

触ろうと躍起になってどれくらい経ったんだろうか、そのうち、たったひとつ、 色のある球を見つけた。 乳白色の球の中にひとつだけ違う色。目立つはずなのにまったく気付かなかった 。深い、青い球。深い海の色。とても綺麗で目が奪われた。
気付いたら手を伸ばしてた――

球は逃げずにすんなり触れた。いや、触っていない。飲み込まれてる―?

怖くなって手を引こうにも、無理な話だった。球はだんだん大きくなってを飲 み込んでいるのだから。反射的に目を瞑る。ついに全身が、とぷんと入り込んだ 。その先は――






「さぁ、物語を歌おうか」