気がつけば海の上だった。小さな小さな小舟の上。円を描くように存在する地平線を見て、まるで、あの時に見た、深い、青い球を綺麗に割った断面図のように思えた。気持ちが悪い。ごろりと寝転んで刺すような日差しを容赦なく浴びた。 本当なら、この状況に怖じ恐れるべきなのかもしれない。震えるべきなのかもしれない。しかし思考とは裏腹に酷く落ち着いていた。 緩やかに頭の中に流れるヴィジョン、この世界の始まり、闇の孤独、闇が流した涙、それが剣とたてを生み、剣とたてはお互いの対抗心から争い、切り裂かれたたての欠片は大地に、剣の欠片はきらきらと空を創る。そしてふたつが争いの間で生じた火花は星に。星の輝きはひとに宿る。 綺麗な世界を肌で感じては泣きそうだった。 何日も雨風に吹かれ、日に晒され、は己の変化に気づいた。 腹が空かない、汗も掻かない、暑いとも、寒いとも感じない。まるでぴたりと歯車が止まってしまったように。その代償なのか、睡眠だけをただただ欲求した。波音は子守唄となってに襲いかかる。それに抗うこともなかったのだが。 「おい、子供だ――」 「こんなにボロボロになって――」 幾つも声がして、重い瞼をこじ開けると、見えたのは青。 海のように深い青。その奥に見えるのは星の輝き。 は嬉しくなって擦れた声で、震える指で慈しむように、そうっと輪郭をなぞった。 「やっと会えた。わたしの星」 星の名前は、ラズロと言った。 |