きれいにしましょうどこもかしこも
「連れていくの?」
「…」
ぐらぐらする、むせ返るような血の匂いの中に。肉塊をその手に振り返る吾代くんの手やシャツも血に染まっていて、気持ち悪い。
もう動かないのかな、
「國春さん」
ああ、身体と頭が真っ二つにもなりゃ、そりゃ動かないはずよなあ。
わたしは社長室のテーブルに駆け寄って、上に在る国春さんの首を抱き寄せた。この部屋も随分血で溢れているけど國春さんの顔にも血が飛んでいて、やだな。ごしごしと服の袖で顔を拭いてあげるんだけど、血は乾いちゃっててパリパリになってる。取れなくてムカついたから舐めたら、吾代くんに慌てて引き剥がされた(しかも國春さんの体を投げ捨てたよこいつ)。
うーん、それにしても鉄っぽい味だなぁ。
「何やってんだテメェ!?」
「何って、顔を綺麗にと」
「そんならタオルでも濡らしてこいやァ!」
なにぷりぷり怒ってんだよう、嫉妬か、嫉妬だったらかわいいなぁ。國春さーん、これどうなんだろね。
もうふたりで吾代くんからかうこともないね、さびしいよ。でもかなしくはないと思うんだ。頭が整理できてないってこともあるけど、だってわたし、ほんとのひとりじゃないもの。
國春さんがわたしを救ってくれたんだよ。ひとりにしないでくれたから、だから、わたしは悲しくないなあ。出来れば、もうちょっとあなたと話せたら嬉しかったのだけど。
しかし、このさびしさをわたしだけじゃなく吾代くんにも与えたのは誰だろうね。罪な野郎だ。
どうせこの事務所内にあなたを殺したヤツが居るんだろうけど、そいつは逃げるのか、それとも何か、
…まあいいか、それはまたあとで考えよう。
とりあえず今は國春さんを綺麗にしてあげなきゃ。
ひんやりとつめたい頭をぎゅっと抱えて、濡れタオルを取りに簡易キッチンへと走った。
ごだいくんごだいくん、きみはわたしからはなれないで、かわいいこ