はじまりのおはなし















「世界は大きいわね、面白いわ」

ロビンに促されてわたしの世界の話を色々していく。元より説明するのが苦手なわたしは、ナミに羊皮紙とペンを借り、絵も交えて詳しく話した。キッチンのテーブルをみんな囲んで、わたしがひとつひとつを語るたびに、きらきらと輝く目が早く次の話をしろと語りかけてくる。わたしにとっても普通の話でも、彼らは違うらしい。飛行機の話なんかしたときには、ルフィやウソップなんかが特に凄いと話していた。この世界には飛行機はないらしい。

「世界背景はほとんど違うわね。世界がその、ネットワークかしら?それで情報を共有できるなんて。それにあなたの国では銃や剣なんかも禁止、だなんて。普通ありえないわ。国に王も軍隊も存在しないなんて凄いことだわ」

ロビンはそう言ってティーカップをくるりと回してから口を付ける。他に話すこと、考えていると、わたしは「あ」と間抜けな音を漏らして、自分が肩から斜めに引っかけていた鞄の存在を思い出した。

「そうだ、これ」

鞄のチャックを開けて、中身を全部ひっくり返すと、財布、携帯電話、化粧ポーチ等がガチャガチャと机を叩いてテーブルの上に散らばった。財布を手にとってお金を並べてみた。

「これがの世界のお金?」
「そう、わたしの国でしか使えないけどね」

ナミが手にとってまじまじと観察している。隣に座っているサンジやウソップなんかも覗き込んでいるが、まるで初めて見る、そんな顔である。

「もしかして通貨、違う?」
「全然ちがう・・・なにこれ、すごく細かいのね。コインも、似てるけど違うわ」
「こっちは単位はなあに?」
「ベリーよ」

ゴソゴソとポケットを漁って見せてくれる。なるほど、まったく見覚えが無い。外国のようなコインだけど、ベリーなんてのは聞いたことが無い。

「これ、なんだ?」
「電話」

ルフィが携帯電話を指先で摘んでひっくり返したりしている。彼から受け取ると、カメラモードを起動して、チョッパーとルフィに向けてボタンを押す。
軽やかなメロディを奏でると、画面に彼らの呆けた顔が映し出されている。ディスプレイをみんなに見せると、歓喜と驚嘆の声があちらこちらで聞こえた。

「スッゲエな!俺とチョッパーだ!!」
「これ、写真?」
「うん、他にも色んな機能があるよ。電卓にもなるし、これで通話も、メール・・手紙のやりとりも出来るから。調べ物があるなら、ネットに繋いで、検索掛ければ本を見なくてもこれでほとんどのことが調べられるわ」
「そんなことまで!?」
「必ずしもってわけじゃないよ。機械と、ネットワーク。それが繋がってなかったら無理なのよ。だから、この携帯も、今じゃ役立たず。圏外だもん。それに充電器もないから、何れはなにも映さなくなる」

データボックスを選択して、今まで保存している写真をひとつひとつ見ていく。友達や家族を映したものが表示されていく。みんな笑顔で、楽しそうだ。
そのまま電源を落として広げたものを鞄の中に押し込んでいくと、ナミがぽつりと言った。

「あんた、本当に別の世界の人間なのね」
「あら、そう言ったのはナミじゃない?」
「半信半疑だったのよ」
「わたしはまだ実感沸かないなあ」

全部直し込んで鞄の口を閉めると、お腹がぎゅーっとなって、空腹なのを訴えてくる。そういえば、仕事終わってからご飯食べてない。お腹をさすってると、サンジがくすくす笑ってこっちを見た。

「話も終わったみたいですし、そろそろ飯にしましょうか?」

周りにも聞こえていたらしい。少し恥ずかしいけど、頷くとサンジは立ち上がり、ルフィたちはご飯を催促して雄たけびを上げていた。















おなかへったなあ