はじまりのおはなし
















その日はやれ宴だ、と甲板に出てみんなでわいわいと騒いで過ごした。
サンジくんはコックらしく、出てきた料理はそれはそれは豪勢な物で、わたしは目を輝かせっぱなしだった。どれも美味しくて、舌鼓を打っていると、お酒を片手にナミが絡んできた。

、飲んでる?」
「うん、料理も美味しいし幸せ」
「んふ、いい腕でしょう? うちのコックさん」

ナミが目を細めて自慢気に笑う。その顔を見て、大切にしてるんだと思った。みんなが楽しそうに笑っている姿を見るのは微笑ましい。心底楽しそうで、見ているこちらの心がほくほくする。ルフィやウソップが踊り出すともう大変で、チョッパーも悪ノリして一緒になるし、ナミは手を叩いて笑っていた。サンジも給仕を終えたみたいで、木箱を背中にして座り、笑いながらグラスを傾けていた。
ゾロはというと、わたしを警戒しているのか、目が合うたびにじと、と睨まれる。まあ、仕方ないとは思う。異世界から来た人間で、帰るところが無いから仲間になる。なんて馬鹿げた話だ。わたしなら信じられない。それでも受け止めてもらえたのは奇跡かもしれない。頭がおかしいと言われても過言ではないだろう。実際、腕が伸びたり、トナカイが話したり、腕がにょっきり生えたりするこの世界ですら、世界を跨ぐという話は聞いたことがないらしいのだから。しかし、帰れるようになるまではどうしようもないし、違う世界に来る人間なんてきっとゼロに等しいと思うんだから、わたしはこの世界を楽しめばいいと思う。

「…しっかし、海賊かあ」
「なあに?」
「いや、海賊ってことは戦うんでしょ? わたし戦えないよ」
「…やれることやればいいんじゃない?」
「まあそうなんだけど。あ、やっぱり海賊なんだったら略奪とかするの?」

ナミが目をまんまるにしてからにやりと笑う。わっるいかおだ。

「馬鹿ねえ、もしそうなら私達、あんたを縛り上げて牢屋にでも入れてると思わない?」
「それは考えた。でも野放しなんだもん」
「海賊には2種類あってね、無法に略奪なんかする海賊は”モーガニア”と呼ばれているわ。私達はそいつらをカモにして冒険をしてる”ピースメイン”と呼ばれる海賊よ」
「なるほど」

温くなったグラスを傾けて一気に中身を煽る。モーガニアにピースメインか。どうやらわたしは本当に運がいいらしい。ナミはにっと笑うと、空になったわたしのグラスに並々お酒を注いだ。ちょ、こぼれるって!

「さーて、あんたたち!もう一回乾杯よ!新しい仲間に!ルフィ!」
「おお!」

ナミが大きな声で叫ぶ。みんなも笑って手に持っていたグラスを空に掲げた。

グラスにぴかぴかと星空が映し出されて綺麗だった。










乾杯!